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選手を支えるフットボールビジネス(セミナー2)
<セミナー2>
「強化部長という仕事」
〜FC東京のチーム作り〜

東京フットボールクラブ(株)取締役強化部長 鈴木徳彦さん


【FC東京の成り立ち】
FC東京の前身、東京ガスサッカー部が創部されたのは1935年。以来、81年東京都リーグ1部昇格、92年JFL参入(7位)、98年JFL優勝、東京フットボールクラブ(株)設立、99年J2参入(2位)J1昇格…と、順調に歴史を積み上げてきたクラブである(99年には、市陸でJ1昇格決定の胴上げを見せられたのは、あまり笑えない昔話だが)。

FC東京のクラブプロフィール、クラブビジョン等は公式サイトに詳しいので、ぜひそちらに目を通していただきたい。

現在の資本金は807,000,000円、株主数は324団体(303社、21団体/07年2月現在)。株主数では恐らくJリーグ1ではないかとのこと。05年の営業収入は31億6900万円で、資金力はJ1では中位より少し上くらいのレベルにある。

【FC東京の組織、地域貢献活動】
主に、トップチーム、U-18(ユース)、U-15(ジュニアユース)深川・むさし、サッカースクールからなる。また、バレーボール部も所有している。
クラブにはコミュニティーアフェアーズという地域とクラブを繋ぐセクションがあり、多摩地区6市と連係しながら地域密着をめざす活動を行っている。

サッカースクール…東京ガス時代から社会貢献活動の軸にサッカースクールを置いており、現在では都内11ヶ所(深川、錦糸町、千駄ヶ谷、八幡山、大森、駒沢、小平、調布柴崎など)に会員3,300人が所属。

サッカークリニック(1日サッカー教室)…年間約100回開催。約10,000名が参加。

派遣コーチ…約32チームを指導。

キャラバン隊…教育委員会とタイアップし、小学校の体育授業、総合学習授業等でサッカー指導。(都内約65校)

サッカーフェスティバル…ジュニア、ジュニアユース世代や、ミセス、社会人のサッカー大会を開催。

U-18、U-15チームについては、高円宮杯やJユースカップ等で好成績を挙げており、トップチームの梶山選手はサッカースクールからの生え抜き選手である。

【FC東京の目標、チームコンセプト】
目的…“夢”と“感動”と“一体感”
目標…勝利=Jリーグ優勝
チームコンセプト(価値観)…強く愛されるチームを目指して
 (1)最後まで諦めない (2)切替速く、全員守備・全員攻撃 (3)フェアプレー (4)ファンサービス向上 (5)人間性の向上

チームというものは、「選手の質」「指導の質」「取り巻く環境」という3要素がバランスよく大きくならないと強くならない、ということを基本的な考え方でチーム強化をしている。

【FC東京の監督選び】
そのときのチーム環境、目的によって、監督選びは変わっていくものである。
チームが安定しているときは変化を好まないものだが、それを続けていると周りの変化についていけなくなってしまうため、「替え時」の見極めは大切だ。チームへの刺激にもなる。

95〜02年 大熊清
選手を見る目が厳しく、卓越したリスクマネージメントから大胆なサッカーを展開。今のFC東京の基礎を創った功労者である。

02〜05年 原博美
若手育成に長け、攻撃サッカーを発展させた。選手だけでなくチームスタッフに対する心配りも細やかで、チームマネージメント力は素晴らしい。

06年 アレシャンドレ・ガーロ/倉又寿雄
ガーロはFC東京史上初の外国人監督だった。日本サッカー界の流れが有力選手の海外移籍など、海外に目が行く時代に合わせて外国人監督を招聘した。ガーロに決めたポイントは、単身で日本に乗り込んでくるという意気込みを持った人物であったということ。他チームでは、外国人監督がスタッフも海外スタッフで固めるケースが見られるが(大分、磐田など)、監督が交替してしまうとスタッフもごっそりチームを離れてしまい、クラブには何も残らなくなってしまうので、それだけは避けたかった。
結果的にシーズン途中の交代ということになってしまったが、言葉の壁はなかったものの、国民性の違い、サッカーに対する感覚的なギャップは大きかった。ブラジル人監督は日本人監督と違って、選手が一定レベルまで自らの力で上がってくるのを待つ傾向がある。そこから、選手との意識のズレが生まれ、選手に元気がなくなってしまった。倉又監督へのチェンジは、「FC東京らしさ」を取り戻すためだった。

監督就任要請に当たっての考え方は、
・国内外のサッカーの現状把握ができている指導者であること。
・チームコンセプトや流れを理解でき、密にコミュニケーションが取れる人物であること。
・現状のチームのベースを生かした強化ができる指導者であること。
等を基本ベースに監督選びをしている。
今年から原監督が復帰するが、今までの若手育成を基本にしたチーム作りから、優勝を目指すチーム作りへの転換を監督とは確認している。

【FC東京の選手獲得】
(1)チームに合った選手
東京ガス時代は、獲りたい選手がいても入社試験で落ちてしまい、入れないということがあった。しかし、入社試験があったお陰で、社会人として一定レベル以上の選手が入り、現在のクラブの基盤になった。

(2)獲れる選手から、獲りたい選手へ
MF浅利選手は、最初はJリーグからお呼びがかからない選手だったが、東京ガスでは十分使えると判断して獲得した。今でも貴重な戦力として頑張ってくれている。
00年、01年あたりから、競合して選手獲得する方向に転換した。その成果が出たのが04年。増嶋と阿部を他クラブとの競合の末獲得できた。
今年は福西とワンチョペを獲得することができたが、正直やってみなければ分からないのがサッカーの難しさだと考えている。

(3)移籍、引退選手について
退団後をしっかりケア、サポートすることがクラブの信頼を得ることに繋がると思っているので、退団選手の動向はほとんど把握している。毎年、退団選手や元スタッフを試合に招待する日を設けている。
また、選手のプロとしての適性は3年で判断されることが多いが、例えばU-18出身の李忠成選手(柏)は結果的にトップチームでは出番がなく、興味を示していた柏に移籍して今ではU-22日本代表に選出されるまでになった。入れる以上に、出口の見極めはしっかりとやらなければならない。

(4)外国人選手の獲得について
かつては代理人を通してビデオで判断していたが、予算に余裕ができた今は、強化部スタッフが必ず現地に飛び、実際に試合を観て、本人に会うということを大前提にやっている。年に数回はブラジルで試合を観てターゲットを決める(エージェントに入ってもらう場合もあるが)。
例えば、ササ・サルセード選手は、パラグアイで実際にプレーを観て、直接本人に会って獲得を決めた。しかし、05年はチーム状態が悪く、点が獲れる選手が欲しかったので、本人のためにもレンタル移籍させた。

(5)高卒、大卒選手の獲得のポイント
どこのクラブでもやっていると思うが、ポジション別・年齢別のチャートを作り、バランスを見てターゲットを決めている。特に大卒選手は大学4年間の経験があるので、それをチームに持ってきてリーダーになってもらえる選手を獲得する方針である。

【強化部の仕事とは】
監督の仕事が「チームを強くすること」であるならば、強化部の仕事は「強くあり続けるチームを作ること」だと思う。資金作り、環境作りが基本。それは人作り、組織作りでもある。
そして、自分たちのやっていることが日本サッカーにとって有益なのかどうか、ということを常に頭に置いている。ジェフ千葉が阿部選手を浦和に移籍させたのも、日本サッカーのためを思ってのことだろうと理解している。



…鈴木強化部長の登場時に分かったのだけれど、この日のセミナー参加者は基本的にはメディアと業界関係者が多く占めていたのだが、FC東京サポも数人含まれていたようである。質疑応答ではFC東京の選手獲得方針について具体的な質問をする人が何人かいた。その点、新潟はカンファレンスに神田強化部長が出席してくれたお陰で、参加料500円で貴重な話を聞けたわけである。あの日参加した人はラッキーだ。
FC東京の強化部は、さすがに新潟よりも何年か先を行っている印象だが、向かっている方向は新潟と大差はないという感じがする。新潟もいつか追い越せるように頑張りたい。
author:ぐっちい, category:サッカー
comments(4), trackbacks(0)
Comment
どうも。
私が気になったのはここ。
>サッカークリニック(1日サッカー教室)…
>年間約100回開催。約10,000名が参加。

>派遣コーチ…約32チームを指導。

>キャラバン隊…教育委員会とタイアップし、
>小学校の体育授業、総合学習授業等でサッ
>カー指導。(都内約65校)

東京と新潟の違い、人口の違いでしょうが、新潟の場合は年30数回のクリニックと池田さんのインタビューで読みました。
この数を増やすことは難しいでしょうが、JSCと連携してキャラバン隊のようなものを実施できるといいなと思います。もちろん行政の資金的サポートを受けてのことですが。
reo, 2007/02/27 5:08 AM
>reoさん
確かに、東京という大都市圏のパイの大きさというのもありますが、根本的にFC東京とアルビレックス新潟では人手の数が違う、というのも大きいと思います。
FC東京は東京ガス時代からサッカースクール活動に力を入れてきていた歴史があり、スクールコーチは現在17人もいます。アルビの7人と比べると、そこからすでに圧倒的な差があるんですね。
そういう意味でも、JSCとの連携はいいアイディアですね。知恵を絞ればやれることはたくさんありそうです。
ぐっちい, 2007/02/27 9:51 AM
あらら、実は私もつい先日、FC東京の練習試合を観て
「東京の人口の多さの賜物なのかな〜」と感心した出来事があったんです。
ちょっと言い訳すると、私が“練習試合”東京ダービーに行ったのは、この日「餅まき(もとい出陣式)だけのために磐田には行かないやね〜」って状況だったのと、ズバリ“無料”だったから!(爆)

FC東京は今野の欠場(風邪で発熱)と五輪代表組の不在で、メンバー的にはちょい落ちだったのですが、その中でひときわ輝きを放っていたのが背番号30MF森村昂太選手だったんです。
「ヤツは何者?」と思いメンバー表を確認してみると、ユースから昇格したルーキーくんでしたのだ。
昨年の東京ユースが強かったことは何となく知っていましたが、なるほどなるほど、物怖じせず思い切りよく自信を持ってプレーしてましたよ。

彼もスクールからの生え抜きなんだろうなぁ。生粋の小平っ子みたいだし。(笑)

人口のことでいえば、私はこうも思いましたわ。
「東京でこうなんだから、中国が本気で強化し始めたら末恐ろしかろう…」と。
今でさえ、強化の香りはプンプン漂ってますけどね〜。あれはまだ本気なんて言えないような気がします。つくづく、恐ろしか〜。(苦笑)
はまねえ, 2007/02/28 5:22 PM
>はまねえさん
何で言い訳から始まってるのか分かりませんが(にやにや)

去年のFC東京ユースはJユースカップ準優勝でしたもんね。ジュニアユースは深川とむさしの2チームとも高円宮杯に出場して、準優勝と3位。鈴木強化部長が、
「いずれ東京同士の決勝が実現するかもしれません」
と誇らしげに言っていたのが羨ましいやら、悔しいやらでしたわん。

中国はねぇ。本気になれば何でもベラボーに強くなりますからねぇ。寝た子を起こしたくないんだが。
ぐっちい, 2007/02/28 7:01 PM









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